八十島コト
【小説の紹介】
バドミントン世界ランキング一位の柿田が、東京五輪で負けた。金メダル候補ナンバーワンと言われながら、不祥事により、前回のリオデジャネイロ五輪の出場を逸してから、再起をかけていたのにだ。
ところで、その不祥事をすっぱ抜いたのが、千経新聞社だった。柿田が賭博喫茶に出入りしていた一年半も前の事を蒸し返してのスクープだった。世間は大騒ぎとなり、直前に予定されていたリオ五輪への出場もかなわなくなった。影響は、彼を支援している企業にも及び、ひいてはその企業からの広告も止まり、千経新聞社自体の減収ともなった。
二十歳そこそこの若い選手生命より、自社のスクープを優先し、正義感を貫いた千経新聞ではあったが、折からの新聞離れから、台所は火の車であった。社長の独断による著しい派閥人事が収益にも多大なる悪影響を与えていた。また、自分の出身母体である社会部出身者を偏重登用する余り、政治部や広告局のモチベーションはかなり低下していた。社長以下経営陣が打つ手は、リストラしかなく、有史以来の大リストラが敢行され、現役の政治部長も辞表をたたきつけた。
そんな時、今度はある出版社からスクープが発せられた。それは、千経新聞の社会部の記者が、ライバル社の社員といっしょに、今をときめく話題の検事、次期検事総長の椅子を狙う東京高検検事正の黒石と賭け麻雀をやっていたという前代未聞の不祥事だった。しかも、そのスクープは自浄作用がないと見た千経新聞社の有志から出版社へリークされたものだった。黒石はすぐに辞職した。ただ、千経新聞社側は茶を濁す処分をするのみで、実質的に責任を取らなかった。直後に、いっしょに麻雀をやっていた競合他社の社長が辞任した。
そして、世間の非難を一身に浴びる中、衝撃的な事件が勃発した。
【作者の紹介】
第14回さきがけ文学賞最終候補(店長はどこだ・幻冬舎より電子書籍にて発売中)
第24回北海道文学賞最終候補。