雪夢往来
時代小説SHOW
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1,430円(税込)
本の説明
名著をめぐる出版秘話
テレビもインターネットもない江戸時代、越後の雪深さはほとんど知られていなかった。塩沢の縮仲買商・鈴木牧之は、越後の風俗や奇談を書き留めた「雪話」の刊行を夢見ていた。
寛政九年、当代一の戯作者・山東京伝は、奇妙な生き物の絵や信じられない光景が綴られた雪話の原稿に引き込まれ、出版に向けて動く。しかし、版元から多額の制作費を要求されて頓挫。蔦屋重三郎没後の出版界の厳しい状況が生々しく描かれる中、相次ぐ仲介者の死去など波乱を経て、原稿は京伝のライバル・曲亭馬琴の手にわたる。
名著『北越雪譜』が世に出るまでの四十年間の物語。牧之の夢と執念が、塩沢での暮らしとともに丹念に描かれている。牧之に関わった京伝と馬琴の創作スタイルの違いや、職業作家としての矜持が鮮やかに活写され、その対比が見事だ。本が生み出す感動を存分に味わえる一冊である。
